保残木マーク法

保残木マーク法とは

島﨑洋路先生

 昭和52年(1977年)、信州大学教授 島﨑洋路氏によって創案され、長野県根羽村で手遅れている間伐の推進と間伐材の有効利用をはかるため、スギの密植短伐期施業地を大径材生産施業に転換するために実施された間伐法。
 後に根羽村及び能登地方における「高密度スギ林分の取扱いにつて」の報告書の中で、この根羽方式の間伐法を「保残木マーク法」と命名した。

島﨑洋路:元信州大学演習林教授。独自の間伐法(保残木マーク法・列状間伐)を駆使し、山の赤ひげ先生の異名をもつ。高い理想を低いハードルで叶える力をくれる人。信州大学退官後「山造り承ります」の看板を掲げ、自ら地域の山林の施業診断を行い間伐等の作業を請け負う。
 また、地元企業が開校した森林塾で森林に興味を持つ全国から集まった塾生に分かりやすく林学の基礎を説き、自らも90歳まで現役山師を貫いた。全国の教え子や弟子が「真摯に理論的に山と向き合う」島﨑イズムを伝承する。
※岐阜県立森林文化アカデミー特任教授(2001年~2004年)
著書:「山造り承ります。」(川辺書房)

1.保残木マーク法による間伐

①目標とする林型に達した時に残したい木(保残木)を予めマークする。
②マークした木の成長に支障を及ぼすおそれのある隣接木を優先して数回に分けて間伐を行う。
③その他の立木は保残木の成長に影響することが少ないので、副林木として適宜保残しても良い。
④切り捨て間伐の場合は第一次間伐によって応急の目的は果たされる。
⑤利用間伐の場合は、支障木の他にマーク外の良質木も加えて伐出経費の補てんを図れる利点がある。

2.保残木マーク法の特徴

①林分の疎密度や樹種に関係なく実行できる。
②林分の仕立て目標が明確にできる。
③保残木の成長を阻害する隣接木が確実に除去される。
④間伐木の選定が容易である。
⑤市場性の高い間伐材が得やすい。

3.「高齢級過密人工林」を「公益的機能を重視した環境林」へ

 杣の杜学舎では、島﨑先生の教えを受け継ぎ「保残木マーク法」を放置人工林対策として「高齢級過密人工林」を「公益的機能を重視した環境林」へ誘導する施業に応用できないかと考え、その実践モデルとして美濃市片知のふくべの森の事業地に「保残木マーク法モデル林」を設定して施業実践と普及活動を進めています。
 保残木マーク法の成否を左右するのは「選木」です。将来に向けての成長が期待できる「優良木」や「災害発生を起こしにくい活力のある木」を適正な配置で残すことが「保残木マーク法」の基本となります。間伐作業で伐った木は可能な限り搬出し有効活用するととともに伐出経費の補填に充てます。本当の結果が出るのは100年先になります。
 

4.公益的機能の最大発揮と林分成立段階の関係

 保残木マーク法により「高齢級過密林分」を「公益的機能を重視した環境林」に誘導するには目標林型を老齢段階の人工林(又は針広混交林)に設定します。老齢段階の林分では木材としての「純生産量」は低下しますが、「生物多様性の保全機能」「水源涵養機能」「表層有機物土壌量」「森林生態系の炭素量」ともに高い機能を維持することが分かります。(下図参照)
 また、皆伐再造林では再造林時や若齢段階時に多額の保育経費と保育作業が生じます。また、若齢段階では森林の持つ公益的機能も著しく低下し、土砂流出等の災害リスクも上昇します。保残木マーク法による非皆伐施業(間伐又は択伐)で適切に「環境林」へ誘導を行うことで、その後は放置管理が可能な自然力を活かした森林管理が可能となります。

資料:藤森隆郎 2001より

5.保残木マーク法モデル林の実践

(1)施業提案書

2)美濃市片知 ふくべの森「保残木マーク法」モデル林

6.資料編

●相対幹距比・保残木マーク法の講習資料がダウンロードできます。
※資料はご自由にお使いいただけます。※資料の版権は杣の杜学舎に帰属します。

①保残木マーク法による森林管理(PDF)

②相対幹距比(Sr)早見表(PDF)

③保残木マーク法マニュアル 形状比早見表(PDF)

④保残木マーク法 調査票(PDF)