私たちの仕事は「森を地域の財産に」すること。
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多くの林業再生に関わる人たちは「林業が再生されれば地域が活性化される」という筋書きを描いています。しかし、果たしてそれだけで地域が再生されるでしょうか。ビジネスが高度化すればするほど、人の雇用は最小限に抑えられますし、地域との関わりは薄くなります。私たちは、「地域を素通りして地域の森から資源と収益を外部に運び出していく」という現実の姿に直面しました。
このような現実に対して、杣の杜学舎では地元の視点で森林の再生を試みようとしています。国策である「森林・林業再生プラン」・「森林経営管理制度」が産業としての林業再生を基本とするのに対し、この取組は森林を地域財産と捉えて、地域の森林資源の管理と活用を地域コミュニティーの再生を念頭に入れて展開していこうとするものです。しかし、両者は相反する関係ではなく、「森林・林業再生プラン」「森林経営管理制度」ではカバーできない領域を「共有林の再生」を軸に地域コミュニティーの再生をはかることで、地域の森林管理の仕組みを補完していくことが重要な役割となると考えています。
杣の杜学舎の進める「片知川源流部水源の森づくりプロジェクト」は、地域が抱えている森林の現状から全体の森林管理計画を積み上げていこうとする取組で、地元で開かれた勉強会「森を地域の財産に」には 50 名以上の参加者が集まりました(写真 )。地域を活性化するには、重層的な事業を生み出す必要があります。それは、事業としては直接にはお金にならないことであったり、地域コミュニティーを再構築することであったり、地域住民が直接的に地域の森づくりに関わる仕組みづくりであったりします。地域を動かすには、国策的な大規模プロジェクトよりも、地域の財産管理としての山仕事や、地域の森林を活用した副業的林業というような里山活用的林業のほうが地域社会とつながりやすいこともあると実感しています。
大型の林業機械を入れて、高資本、高効率で山から森林資源を出すことを目指す現在の林業は、事業者や林業を国の基幹産業にすることを目指す人たちにとっては魅力的であっても、それが地域再生に直接的につながりにくい側面があるのも事実です。地域の視点で森林を再生するには小規模であっても「地域の人影が見える林業」を目指すことが大事だと思います。
「林業」に先駆けて日本の「農業」が大規模・効率化の道を歩んできていますが、地域コミュニティーが存続している地域には、副業型農業や地域ネットワークに支えられた個人経営的農業が生き残っています。このことからも、森林を地域の財産と捉えて「共有林の再生」を試みる取組は重要な使命をもつと考えます。事業者が行う「産業としての林業」には「金銭的な収益」という見返りが必要となりますが、地域が主体となる「地域財産管理としての林業」には必ずしも金銭的見返りが必要ではないこともあります。それは、森林がもつ公益的機能を地域が享受することによって、地域の利益が満たされるからです。地域資源としての森林を最大限に利用しながら持続的に次世代に受け継いでいくという基本理念が、杣の杜学舎が目指す「森林管理」の哲学の根底にあると考えています。
「GREEN AGE」(2017年4月号)「共有林を地域の水源林として再生する」より(※一部改編)